ユーミンが描く世界は、そこに描かれる強くてかっこいい女性たちや、色彩豊かな曲の世界観がとても魅力です。自分の日常に投影してみたり、力をもらったりします。
私の主観的な解釈ではありますが、ファンではない方もユーミンの曲を聴いてみたいと思っていただくきっかけや、世界観を感じてもらえたら嬉しいです。きっとあなたの心のビタミンになっていくと信じています。
躓いたり、悩んだりしている女性たちが少しでも前向きに上機嫌に人生を楽しんでいけますように。
けちらしたいあなたとの日々
潮風にちぎれて(前半)
泳ぐにはまだはやい
よせ来る波 くるぶしまで
あなたの好きな このサンダル
なぜはいてきたんだろう
砂浜にうちよせた
木ぎれひろい 沖へ投げた
あなたと歩いた年月を
けちらしてみたかった
なぜ泣けないのかな
ひどく淋しいのに
吹きすさぶ潮風に
あなたは息を止めていた
かわいい彼女のこと
これから自由に愛しなさいよ
<引用> 「潮風にちぎれて」曲・詩 松任谷由実
別れたあとの彼に会う機会があって、彼の好きなサンダルを履いてきてしまったことに、気が付かずにいた自分の未練に向き合ってしまったようにみえます。
春の海岸。吹きすさぶ潮風のなかで、まだ揺れ動く彼への気持ちを断ち切ろうと「かわいい彼女のこと これからは自由に愛しなさいよ」と言い放つ健気で、強くいようとする彼女がとても愛おしいです。
別れる前からきっと、その新しい彼女の存在を知っていたのでしょう。なんて切なくて苦しい恋だったのかな・・と思います。
春の強い風にあおられるように、新しい決断をしようとする姿を新しい季節が後押ししてくれているようです。
潮風にちぎれて(後半)
国道に止まってる
小さな車 指さして
うそでも わたしは背をむける
恋人が待ってると
今ふりむいたなら
心くじけるから
吹きすさぶ潮風に
わたしは まぶた閉じていた
あなたと来なくたって
私はもとから この海が好き
<引用> 「潮風にちぎれて」曲・詩 松任谷由実
自分の未練を断ち切るために、恋人が待っているふりをする・・そうでもしないと振り払えない彼の視線だったのかもしれません。「今ふりむいたなら 心くじけるから」と。
思い出の多いこの場所で心を決め、私の好きな場所を悲しいものにしたくないという思いが伝わります。「わたしはもとから この海が好き」
最後はこうして、あなたがいない私のこれからの人生を受け入れている彼女の強さがとてもすがすがしいです。
思い出は塗り替えればいい
恋人と別れるときに「もう、この場所へは来られなくなるのかな・・・」と思い出の場所に思いを寄せることもありと思います。
「そういばもともと私が好きだったのに、いつのまにか彼との思い出の場所になってしまった。」そんな切ない思いです。
いい思い出と、その場所の景色と、その匂い・・・なかなか塗り替えて行くのは大変だと思います。この曲の彼女のように、その場所で彼への思いを断ち切って新しい一歩を踏み出せたら素晴らしいけど、出来なかったとしても、その場所に行く度に涙が出て辛くなったとしても、大丈夫。
大丈夫。だってここは「あなたにとっての大切な場所」なんだから。そんな別れた彼のための憂いの場所にしたくない、とそのうちだんだんとそう思えてくるはずだから。
あなたと、これから出会う人との思い出の場所にしていくために、彼との思い出はけちらそう。